腸内細菌はダイエットにどう関係するのか?

ダイエットで腸内細菌と言えばまず便秘解消を想像すると思いますが、腸内細菌がダイエットに与える影響はそれだけではありません。

ある種の腸内細菌は、人間の体内でエネルギー消費量を調節する役割を果たしています。言い換えれば、この種の腸内細菌が多いとエネルギー消費量が増える可能性があるということです。

また、ストレスは間食を誘発するなどダイエットに対してマイナス要因ですが、この種の腸内細菌が人間のストレスの感じやすさにも影響を及ぼしています。

どの種の腸内細菌をどう増やせばダイエットに役立つのかを含め、腸内細菌がダイエットにどう関係しているのかについて解説します。

乳酸菌がエネルギー代謝を上げる可能性

乳酸菌は腸内善玉菌の代表格ですが、これが腸内に多いとエネルギー代謝が上がる可能性があります。

具体的な根拠の1つは、京都大学大学院薬学研究科の辻本豪三教授らの研究グループによって発表された次の研究内容です。

『炭水化物などに含まれる食物繊維から腸内細菌が発酵してつくられる「短鎖脂肪酸」が、体内でのエネルギーのバランスを調節する役割をはたしている』

補足しながら要約すると、腸内の乳酸菌が食物繊維を分解した時に生成される酸っぱい成分「短鎖脂肪酸」が、人間の体のエネルギー消費量を増やすという内容です。

人間の体は過食してカロリーを過剰摂取した時にはエネルギー代謝量が上がり、絶食して生命が危機にさらされた時にはエネルギー代謝が下がるようにできています。

体内でエネルギー代謝を調整している1つの要素が交感神経です。交感神経が活性化するとエネルギー代謝が上がり、抑制されるとエネルギー代謝が下がります。

その交感神経の活性化と抑制のスイッチの役割を果たしているのが、交感神経にある「GPR41」という受容体です。

過食して短鎖脂肪酸が増えれば、短鎖脂肪酸がGPR41を通じて交感神経を活性化させることにより、エネルギー代謝が上がります。

逆に絶食た場合、体脂肪を分解してエネルギー源であるケトン体が合成されます。ケトン体がGPR41による交感神経活性化を阻害し、エネルギー代謝が下がります。

要は、エネルギー代謝を調整する間接的な要素は過食と絶食ですが、直接的な要素は乳酸菌が生成する短鎖脂肪酸の量です。

腸内の乳酸菌に短鎖脂肪酸をたくさん生成させたければ、水溶性食物繊維(不溶性食物繊維にはあまり効果がない)またはオリゴ糖を摂取することです。

過食の原因の1つはストレス

まず、ストレスは過食の原因になります。

長崎国際大学が20歳前後の女子大学生62名に行った調査内容によると、試験直前には最もストレスを感じ、それと同時にやせ願望や過食の傾向が強くなった、とのことです。

ストレスは過食の引き金となり、さらに、やせ願望が強い人ほどストレスの影響を強く受けて過食に走る傾向があったのです。

だから、過食の誘発を防ぐ意味から、ストレスをいかに軽減させるかがダイエットを成功させる1つのポイントになります。

腸内環境の悪化がストレスを感じやすくさせる

腸内環境が悪化すれば、脳で感じるはずのストレスを感じやすくさせます。実は脳と腸には相互に影響し合う関係があるのです。これを「脳腸相関」と言います。

脳腸相関とは次のような関係です。

・腸内環境が悪化する⇒脳でストレスを感じやすくなる

・脳でストレスを感じる⇒腸内環境を悪化させる

腸内環境の悪化かストレスのどちらが引き金になったとしても、より強い腸内環境の悪化とストレスをより強く感じる状態という2つの悪循環に陥る可能性があるということです。

協同乳業が発表した研究内容によると「腸内常在菌が大脳の代謝系に影響を与えていることを代謝産物レベルで明らかにした」とのことです。

脳腸相関が研究レベルで実証されたということです。

この脳腸相関をダイエットに利用するとすれば、「腸内環境を改善させる⇒ストレスが軽減する⇒過食する可能性が減る」という関係が成り立ちます。

腸内環境の改善には、食物繊維やオリゴ糖の摂取が効果的です。